現代短歌

「あの言葉 積もり雪の夜(よ) 新着待ち 理由(わけ)を知る時 温かく溶け」

 「現代短歌 二〇一七」

 

 

荒れた手に 擦り込むクリーム のような君 借りたコートで 覆う傷など

 

 

カレー屋前 きゅうとなるのは 腹と胸 向かい合わせの 思い出も乗り

 

 

地に生える 草の間を 這うように 暮らす今が 入り口か出口か

 

 

手袋を はめる季節に 咲く花が も少しここで 踏ん張れと笑い

 

 

ここに居る 覚悟はあるかと 問う夜を 幾度越えたか 気付けば夜明け

 

 

旧姓を 知る友元気か 年の瀬に 宛名の前で ペンを5秒置き

 

 

川べりの 寒風に揺れる 紅い実が ここで終わりと 言うなよと言う

 

 

空に吠え かたい蕾は 今を耐え 待ちながらも 街を見渡し

 

 

降られ店 温かな麺が 喉を通り 嵩めで濡れた 頬拭きお愛想

 

 

独り者 狭くなっては いないかと 賑わう街で 視野を歩かせ

 

 

闇に沈み また朝が来て 動き出す あの場所へと 繋ぐ列車乗り

 

 

昨日遊び 明日はかきこむ 5分飯 いつもの小道 さてまた行くか

 

 

何処へ行く 庭の蜜柑を 摘んだよと 父の声する 方にドア開け(ひらけ)

 

 

また帰る 故郷(くに)の駅発ち 吐く白息 独り戻る 荷物増えた部屋

 

 

こたつで足 伸ばし放題 寝放題 離れて知るは ぶつかるも愛かな

 

 

たったの距離 新幹線でも 遠いよな 故郷(くに)に帰ろか まだやってこか

 

 

冷た風 ふと見上げれば 対の蜜柑 夜のガス灯 のように光り

 

 

一歩ずつ 黙々と木は 背を伸ばし 道に落ちる葉 来年付ける葉

 

 

うたた寝の マフラーに沈む 若き姿 旅の特急 まだまだ進み

 

 

渓谷抜け 辿り着いたは 城崎の 小雨のつもりは 足に沈む雪

 

 

カメラ終わり 編集友の 缶コーヒー マイルド味に 濁り色とする

 

 

暖房の カフェで帰ると 文字を打ち 慌てて羽織る ダウンジャケット

 

 

銀杏の つぶれたにおいに むせる道 時にカメラは 重しそれでもや

 

 

風に揺れる イチョウ並木に カメラ向け 震えては止める 風邪の弱気手

 

 

日暮れまで ボール追う親子 追う私 もみじの葉の手の 先を祈りて

 

 

新着を 開けば無事でと 故郷より メールに纏う 父の不器用さ

 

 

床の上 灯り消しての ラジオから 語るは策士か 流すはサクソフォーン

 

 

黄金色 稲穂がかおる 田の横を 勢い自転車 新米を待ち

 

 

故郷発ち 脱した瀬戸内 波立たぬ かたや都は 暴れ狂う尾

 

 

ビタミンA 脂溶性とは いうものの 外は明るき この目は暗し

 

 

ニューパケの メンズワックス 髪に揉み 短髪故の トリートメント要らず

 

 

よく見れば 隣の芝は 青けれど 我があおさとは 文字が躍る夜

 

 

幾度なく 山をくだりて 地に踏みし 上流からの 恵み濁ること

 

 

毛抜き持ち 滑る眉毛の 抜ききれず それでもまた明日 生えるは無駄とか

 

 

柚子胡椒 こんにゃくに塗り 夜中三時 腹を満たすは コンビニおでん

 

 

 

 

「現代短歌 二〇一四」

 

 

ダイヤルを 合わせて今夜も 耳踊る ラジオのDJ 響くMUSIC

 

 

手帳がね 無いと言われて 探しては あった半額 やけに嬉しく

 

 

駅降りし もみじ饅頭 3個買い 電車3駅  家路へ急ぎ

 

 

ベランダは 星も霞んで ふかしタバコ 街の灯りに 目元には煙

 

 

目覚めには 市電の音や BACK MUSIC ブラックコーヒー すする口元

 

 

WAO!理不尽 受けし傷を背負うより 心に秘めては 投げぬと誓い

 

 

WAO!理不尽 受けし傷を返すより 心に貯めた 石は時より

 

 

落ちるとこ 落ちてしまえば 上がるのみ 捨てるものありゃ 拾うものあり

 

 

隣人の 芝は青しと 見えたれど 我に返れば ここも DEEP GREEN