現代短歌(2018年~)


あの人の 恋は長そう あの子とも 分かり合えんが 水に流そう

 

 

渇きあり 哀しみカフェへ ようこそと テーブル下に できる影暗し

 

 

慌て食い 夜道をダッシュだ 彼屋さんの 閉店までには ドアを開けねば

 

 

白月の夜(しらづきのよ) 車のライトが 迫りくる 乗っけてタクシー 乗っかるあの話

 

 

あれが為 パート忙し 慣れるまでと ある日を境に ハート忙し

 


胡瓜に塩 絞れば水が したたれど お酢(雄)の具合で 彼女笑むこと

 

 

羨まし カーテン越しの 見舞う影 父子の家庭は 仕方なきとお茶

 

 

鳥獣は つがいで暮らす ものなのに 人間様は ややこしいもの

 

 

着地点 目掛けて駆ける 急ぎ足 そこに着いても まだ先は続き

 

 

牡丹咲 紅さに酔えば ふと袖の 取れ掛けたボタン をむしり仕舞う

 

 

箪笥奥の 出てきたスカート ボタン取れ あの頃ならば 母を呼んだが 

 

 

今の歳の 母は大きく 見えたようで 背の奥で泣くも 子はいつか知り

 

 

一枚の 尻でつぶれた 座布団が 恋の途端に 新品に変わり

 

 

床の母は あのシュークリームを 欲しがって 叶えられずが 今も悔やまれ

 

 

店先の 蜜柑が甘く 艶びかり 家庭の炬燵も 喜(き)で光るだろう

 

 

見送りが こってりあっさり 不満気に 愛だ愛だけ 冬閉じる頃

 

 

これを成す 徒労に終わる ことあれど 諦めんとし 親にはごめんと

 

 

志 諦めんとす 道半ば 待てば店開き ラーメンとす

「あきらめんとす」

「あきらーめんとす」

 

 

駆けっこで まあね一位よ ビリからの ピリ辛おかきを つまみ思い出す

 

 

身体が為 減塩よと言う 母の味 世辞にも旨く なくとも優しい

 

 

独り者 忘れた頃に やってきた ズカズカ入るわ ズカズカ残すわ

 

 

きなのは 玉子の寿司と 好きなだけ 食べてと二人 嘘つき合った

 

 

叶うなら 励むことなく 甲斐もなく ままにはならんが そうれ頑張れ

 

 

頑張れの 言葉は君が そりゃいつも 頑張っているから 声を掛けたい

 

 

辛いよな あれもあそこも あのこもだ 誰かは見てる そうれ頑張れ

 

 

しみじみと 母の苦労を 知ると言えば まあねとまだねと 二つで笑われ

 

 

言電話 涙で喋れぬ 声が出ぬ それを待つ人 いてくれて良かった

 

 

春が来る 去る者あらば 来る者も どうせヨソモノ どこに馴染もう

 

 

倒れるか 倒れないかで 持ち堪え ハートは確かか それならオウケイ

 

 

何食べる 意見が分かれ 腹は減り ちゅうか苛立つ いつも一緒だ

 

 

歯詰まりの 白ネギを指で ちょいとする ひょいと出掛かる 深層心理

 

 

ネギが言う 世間厳しや あんたさん ふてくされんと 一つでもしいや

 

 

お疲れさん 別れてこっそり 定食屋 しゃもじ握れば おかわりも自由

 

 

この街で 風が運ぶは 宝物 嘆きも吹っ飛びゃ 喜び舞い込む

 

 

隣壁 叩く音して 音落とし 慌てイヤホン いやホントすまん

 

 

こんなにも 陽の中で独り 陰を作り 囲むテーブル 思い出し泣く

 

 

駅に立つ 人の抱える 事情など 幾らもあるのに 忘れそうな夜(よ)

 

 

あれこれが 上手くいかんと 後ろ向き あれこれやるだけ 前を向いてる

 

 

待たせたね 待ってるねもない 街一人 ロスがないよで ロスだらけのよな

 

 

独り虚し コーヒー美味し 砂糖無し 梨タルトも無し 成したるもなし

 

 

言葉呑む 言葉過ぎるも あるけれど 君とて同じ だからやってゆける

 

 

籠っている そこを何とかドアを開け 街にくりだせ そこに何かある

 

 

厳寒に 耐える花震え その花を 俯かせる雪 そちらも辛いと

 

 

行く側(ゆくがわ)と 見送る側の こころ差は この時代でも あるだろうにと

 

 

駅まではと 見送り帰りは ポケットの 中で手暖め ぽけーっと君思う

 

 

嘘つきの 言葉がぽとり 落ちまして 元気ですなど 零時に送信

 

 

近頃は 口紅とれかけ 口からは 強がり垂れの 誰かいないか

 

「ちょいと話 暖簾くぐりて 麺すする ごめん責めんで 実は春から」

「つまずきゃ起き ぶつかりゃ撫でて 平謝り もうやだなあと 暮れては追うアレ」

 

項垂れて(うなだれて) もう駄目だなんて 思う間に 社会は回る 追いつけ追いつけ

 

 

この町に 無い無い言おうと 他所の街 そこにはあるよで また無いものあり

 

 

ここに泣き あちらがあると 思うなら まずは駅に立ち 意を決める春

 

 

駅に降り さてこれからと ここに希(のぞみ) 一つまみほどが 丁度良いかな

 

 

くつろぎの 我が家見えれば 心灯り(ともり) まずは手洗い さてと米を研ぎ

 

 

我が身から 生まれし百の 言葉より 君くれる一が 優に超える

 

 

指先で 一から百まで 文字になれ しかし一言 百を揺さぶる

 

 

どう行くか(ゆくか) 閉ざされた道の この先を まだ歩くかと まだ歩こうかと

 

 

この時が 断たれることの 果てであれ 葉は風でふらり あそこ眩しや

 

 

手を添えて 持つは箸かな 待つは人 壁に向く胸を 背にしてくれる

 

 

俯く日 あれがこれがと 悔いるよな 時計は周り 芯が棘抜き

 

 

ゆるやかな 湾曲カーブの ような愛 落ち込みゃ抱きしめ 喧嘩もキスも

 

 

木一本 根は土に張り 気は一本 根は優しくと 誰かさんが言い

 

 

机一人 コップを向かいに 置いてみて 空席からの 空想が跳ね

 

 

ぬか床を こね回す母の 手のひらの 小ささは子が 親になりて知る

 

 

歳梯子 あそこ中程 着きたれば 意外や若き 軽い足取り

 

 

故郷(くに)の音 変わったなあと 目を細め 嬉しく寂しく 春はあちらで

 

 

月は出た お腹はいっぱい 後は好き そろそろ重なろ 朝までの距離

 

 

「福招き 蕾の隣で 笑う子を そっと拝んで 分けて頂く」