短歌4(2020年頃~)

 

「オレンジの 水性ペンが 波をかく これ重要と 不確かに言う」

 

「スピーカーの SONYの文字が SUNNYだと 見えて目ぬぐう あくびだからね」

 

「魂よ 黙り込むような それでいて お喋りな魂よ 明日は晴れるか」

 

「美容院で 思い切りパーマを 掛けたくて 踏ん切り付かずは 髪かどうかの」

 

「伸ばし髪 結べば良いと 笑いつつ ひとり身がこそ 短か髪を避け」

 

「前髪を 伸ばしているのは 自分にて カット失敗 してからの流れで」

 

「松も待つ あそこの桜 咲くを待つ もうすぐですよと 通行人も笑む」

 

「交差点の 縦横どちらへ 行こうかと 迷えるならば 花に託すもよし」

 

「冬の花が 咲けば越せそうな 寒き時 あの笑みがあり 暮らせているのだろう」

 

「椿には 椿なりの 赤みあり 熱は次第に かたちになるやも」

 

「音楽の サブスクなれども 辿り着く いつもの曲 的関係性」

 

「嵯峨野線に 乗りました。でも 二条駅を過ぎ 慌てています」

 

「一息と コーヒー時間に 企んだ トレー紙にペンで お疲れ様と書く」

 

「寒暖差に 気を付けてねと LINEして 春風対応の 上着を探す」

 

「コーヒーの 豆を挽いたら 香り立ち 子は憧れた にがきを越えるもの」

 

「春が来て 春は来ません 小寒くて 天気予報を 観る、明日の天気は?」

 

「リンリンから プルルルから ブルブル経て通知 人を繋ぐ」

 

「風強き 日の雲々は 速かろう クリームパン食べ 場に戻るよ」

 

「気持ちのキ 空を見上げりゃ やわらぎて 溜まる洗濯物 時には洗うよ」

 

「初対面の カメラ売り場の 二人かな ひと時喋る 京都が好きになる」

 

「降りま〜す のボタンを押し待ち バス降りりゃ トラブルありて ヤケだ!回る寿司屋へ!」

 

「私ったら 急いでばかり ふいに見た 靴は穴あき ヨンキュッパの新た」

 

「窓越しに 眺むる雨降り 傘は無し 負け覚悟の勝負 それでも帰ろか」

 

「伸び伸びと しているような 人だったが 暗い影のcry   彼女の涙のsea」

 

「ありがとう 夕暮れ別れの 私たち 帰りの列車は 無口が目立ちて」

 

「友よ今日 結婚式に 駆けつけた 日を思い出す 永久(とわ)ほど共にいたい」

 

「バスは来た 道は魔術あふれ 闇夜ゆき 目をこらしなさい 耳を澄ませなさい」

 

「木は天に 向き伸びゆくよ 時は進み ガラス越しの世 案外に回り」

 

「ごめんねと つなぎ止めようと 謝りて 腹の痛みは? 棘刺さるよう」

 

「冬緑 暖冬とはいえ 耐え忍び 柔らかな光が ほらやって来る」

 

「ふわんとした だし巻き卵 箸つつき 和みと笑う冬 卵になりたく」

 

「遮断機が 降りる瞬間の 今から来る と合図に高まり 左右見渡し」

 

「空き腹を こらえきれずに 定食屋 渇望するは 愛したいのよと」

 

「徹夜ハイ にてお許しを 爛々と 目には光り増し 星に辿り着くかも」

 

「暮れ時に 贈り物への お礼もらい 浮かれ調で聴く ドナウ河の漣(さざなみ)」

 

「おはようさん 滑稽レイディ 鏡見た? 首から値札が 見えてた、私なりに」

 

「トンネルを 抜け出せるかい 走れるかい 地下鉄の揺れ 踏ん張れば明日は」

 

「忙し(せわし)暮らし そんなあなたに 花束を 二人で作れば 焼きそばも美味し」


「迷い道と 迷路は違う 異なりて けれども両語が 課題で、空の下」

 

「穴子めしの 旗、風に揺れ を見ながら 飲むコーヒーの 酸味に戸惑い」

 

「もし部屋が も少し広けりゃ 掴めそう なんてまやかしを 暮れる町に投げ」

 

「空白キー 溜めては思う 改行キー 新たに思う 文字は大きさ」

 

「天気良し 運勢良くて 日柄も良し なのにわだかまる 恋の荒れに椿」

 

「縞模様の シャツより変な 天気だと 傘を閉じ 行こう、また雨。恋も」

 

「距離はある 郷里に帰れば 父と囲む 寿き焼きの具 温まる、縮む」

 

「星々の 五つの角(つの)に 触れようと 一周するなら 尖りに気付くや」

 

「葉々の棘 触れたら痛き 指を舐め 青さはまだも 雨を求むる」

 

「恐々と ライト眩しく 地下へ潜る 派手な壁に合う 地味なシャツ着て」